横須賀の名所−周辺を含めて−

小栗上野介像
童門冬二の小説「小栗上野介」は4度目の勘定奉行をクビになり、知行所の上州権田村に到着したところから始まっている。三河譜代の武士であったが、時代は彼の美学を許容するほど寛容ではなかった。

浦賀に奉行所のあった以外、これといった産業のなかった横須賀にスポットがあたることになったのは、 彼が仏国から借金をして製鉄所(実態は造船所である。造船所にしなかったのには理由があるのだろう)を横須賀に建設したことによる。軍港横須賀の命運はこうして決定づけられたのであるが、 今日の横須賀の礎を築いた恩人と言ってもいい。

勝海舟は氷川清話の中で小栗上野介を誠忠無二の徳川武士と言っている。主戦論を主張した小栗案を一蹴した勝とはウマが合わなかったと思われるが、忠臣は二君に仕えずを通したが故に処刑されたのだろう。新政府で要職に就いた勝や榎本武揚のような変わり身はあり得ないとするところが潔いと言えるけれども、この辺りが勝に言わせれば三河武士の長所と短所を併せ持っていて、結局は度量が狭い ということになるのだろう。
しかし、もし彼が明治政府で外務大臣をやっていたらタフな仕事ぶりで、勝や榎本より貢献したはずだと思うと残念である。

小栗上野介像はJR横須賀駅のまん前、京急汐入駅からは歩いてすぐのヴェルニー公園内にある。

2027年のNHK大河ドラマが小栗上野介を主人公とする「逆賊の幕臣」に決定。楽しみ。2027年は小栗の生誕200年だそうである。


令和7年6月4日改(平成27年8月4日初出)